おかげさまで60周年

活躍しているカワイ音楽教室出身者のご紹介

今こうして歌っているのは、音楽との幸せな出会いがあったから

[ ソプラノ歌手 西口彰子さん ]

音楽教室には、みんなで一緒に音楽をつくり上げていく喜びがあった

幼稚園の頃の西口さん

幼稚園の3年間、カワイの音楽教室にお世話になっていました。最初の2年間はオルガンや合奏を、年長クラスの1年間はピアノの個人レッスンをしていただきました。

とにかく目立ちたがり屋の子どもだったから、先生はきっと手を焼いていたと思うんです(笑い)。それでも優しく、粘り強く指導してくださって、教室に通うのがいつも本当に楽しみでした。

教室には、みんなで一緒に音楽をつくり上げていく喜びがありました。普段のおけいこや家で練習は、自分一人だけの音です。でも発表会が近づいて教室の仲間と一緒に合奏の練習をしたら、いろいろな楽器の音の中に、自分のパートがあるわけです。自分だけで完結していると思っていた曲が、実はその一部だったことを知って、音楽ってもっと大きなものなんだと、3~4歳ながらにびっくりした記憶があります。

自分がこうして今、歌っているというのは、やはり一番最初の音楽との出会いが大きかった、と思います。カワイの教室で、音楽って楽しいものだということを教えてもらえていなかったら、そもそも自分は音楽を始めていなかっただろうな、と思うからです。だから、本当に感謝しています。

アメリカ、ドイツ、イタリアで学んで、今再び日本で活動をスタート

カワイの発表会でお母様と一緒に

小学校に入ってからは、ピアノと歌と合唱のレッスンを受けていたのですが、歌うことがやはり一番好きだったので、東京藝術大学の声楽科に進みました。また、もっと歌の技術を勉強したいと思い、大学在学中からアメリカへも度々、レッスンを受けに行きました。

アメリカでは、見せ方をとても重視していて、ステージの歩き方や身のこなしがとてもきれいだったり、演技力が上手だったりして、総合的に聴衆が楽しくなるようなパフォーマンスを見せるのです。日本の大学では、何かを足すよりも、自分の癖など余計なものを取り払って、よりニュートラルな状態を目指すような指導を受けていましたから、価値観を揺さぶられるような経験になりました。

ニューヨークには4年いて、マネス音楽院でマスターをとったあと、クラシックの本場であるヨーロッパでも学びたいと思って、ドイツとイタリアにも行きました。アメリカとヨーロッパでは、やはりクラシック音楽のとらえ方がまったく違うんです。

ヨーロッパの場合は、クラシック音楽は自分たちが生み出したものという誇りがあります。その感性は自分たちの中にすでに備わっているもので、内なるものを自然に表現すればいい。だから、自分の気持ちをどう伝えるか、ということに重きを置いています。

私の場合、日本やアメリカで丁寧に指導をしていただいたうえで、本場の空気やその国の人たちのキャラクターなどを実際に肌身で感じることができて、とても自然なかたちで歌を身につけることができたと思っています。

その後、昨年の8月からは日本に戻って、国内を拠点にして活動をしています。今は、オペラのいろいろな役に挑戦して、どんどんいろいろな役を増やしていけたらいいな、と思っています。

歌うことで自分が幸せだと思えることが一番大切

2014 年の 8 月にドイツのノイシュタットという街のコンクールに参加して、第 3 位と聴衆賞をいただきました。そのときに、1週間ほど地元の方のところでホームステイをさせてもらいました。

そこはドイツの田舎町で、ワインの製造で有名なところです。町の人たちは、手作りの暮らしをとても大切にしているんです。おいしくパイが焼けたことを、心の底から喜んだりして。そんな姿を見て、幸せっていろんなところにあることを教えられたように思いました。

そして、ホストファミリーは、私の歌に毎日感激してくれて、「あなたは歌うために生まれてきた」と優しく励ましてくれました。私の歌をこんなに喜んでくれる人がいることは幸せなことだと、改めて思ったんです。

ヨーロッパでは、オーディションやコンクールの毎日で、結果を求めて行ったわけですが、ノイシュタットでの暮らしを経験したことで、歌うことで自分が幸せだと思えることが一番大切なんだということに気づきました。その気持ちを忘れずに、これからも1曲1曲を大切に、心を込めて歌っていきたい、と今は思っています。

■ ドイツのヴォルムスという街のジルベスターコンサートに出演した際、翌日の記事

【西口さんのサイトより】2014 年 12 月ヴォルムス、ノイシュタット両都市で行われたジルベスターコンサートにおいてラインラント=プファルツ州立フィルハーモニー管弦楽団と共演。ラクメのアリアを歌い、アルゲマイネ・ツァイトゥング紙に「愛らしく美しいソプラノ、西口彰子によってアリアが披露された時、彼女の光り輝く高音、心地よいビブラート、音程、声のしなやかさによって聴衆は誰もが息を呑んだ」と評される。

●西口彰子さん公式ホームページ http://akiko-nishiguchi.net/

■ 直近の西口さんのコンサート

Midsummer Serenades
~ピアノ・ソプラノ・フルートが誘うアメリカの旅~

2016 年 7 月 20 日(水)
1st 19:30~20:00 / 2nd 20:30~21:00
会場:Melody Line(JR 浜松町駅より徒歩 12 分)
チケット:3,000 円(1ドリンク付き)

■ 2016 年 10 月より西口さん企画のコンサートシリーズがスタート

◎第1回 10 月 9 日(日)

  • 0歳からのクラシック(14 時開演)
  • 大人のクラシック(17 時開演)

◎第2回 12 月 4 日(日)14 時開演

  • ヨーロッパのクリスマスを共に♪

いずれも会場は「妙建寺あんのんホール」(JR 小山駅西口より徒歩 10 分)にて

むしろピアノがあったから、落ち着いて受験勉強に取り組めた

[ 東京大学医学部6年生 平松拓馬さん ]

リニアモーターカーのようなイメージで

カワイ音楽コンクール会場で森田優子先生と

3歳のときからリトミックで、カワイ音楽教室に通い始めました。その頃から先生がピアノを弾いているのを見て、自分も弾いてみたくて、横で一緒に弾かせてもらったことを覚えています。小学校1年生からはピアノを始めて、大学1年生の夏までお世話になっていました。

もう長く 15 年間も習っていたので、先生はお母さんのような存在です。とても優しくて、でも 演奏に対しては厳しく、しっかりと指導してくれました。印象に残っているのは、ショパンのスケルツォ第3番のオクターブのところがうまく弾けなかったとき、「リニアモーターカーのイメージで」 と、声をかけてくださったことです。少し浮かしてなめらかに弾く、という意味なのですが、そんなふうにわかりやすい言葉で指導してくださるので、具体的なイメージが持ちやすかったです。困ったときにはいつも助けていただいて、先生のおかげで 15 年間ずっと、楽しいと思いながらレッスンを続けることができました。

毎週のレッスンがひとつの日常に

門下の発表会にて(大学 5 年生)

今年は大学の最後の年を迎えました。学業との両立は、確かに大変なときもありますが、学んでいることがまったく違うので、むしろピアノの練習はいい気分転換になっています。大学受験のときも、入試のあった2月だけはレッスンをお休みしましたが、それ以外では受験勉強などの理由で休むことはありませんでした。毎週のレッスンがひとつの日常のようになっていたので、レッスンがあることで、逆にあせったりすることなく落ち着いて受験勉強もできたように思っています。

大学に入ってからは、ピアノをやっているアマチュアの人がたくさんいるということに驚きました。実際に医者をやりながらコンクールやリサイタルをやっている方もいて、そういう方を見ていると自分もがんばろうと思いますし、自分もいつかそんなふうに弾けたらいいなと思っています。

大きなホールで弾けることがうれしくて

取材時に弾いている様子

今年の6月に、ソレイユ音楽コンクールで第3位をいただきました。8月末に東京文化会館で入賞記念演奏会があって、ショパンのバラード第4番を弾かせていただきます。今はそれに向けて練習をしているところです。コンクールではスクリャービンの曲を弾いたのですが、スクリャービンの曲を弾くのは初めてでした。今までのショパンやモーツァルトのような曲は、どちらかというと右手がメロディーで、左の伴奏をどう弾くかという感じでした。スクリャービンの場合は、和音がとても多くて層が厚いんです。だから手を使って1音1音どう弾くかということを考えて弾きました。

演奏会で弾くショパンのバラード第4番は、大学1年のときから定期的にレッスンを受けてきた曲なんです。いろいろな曲もやって、またもう一度バラード第4番に戻ってみると、テクニックに余裕ができたこともあって、今度ここはこんなふうに弾いてみようなどとアイデアも広がっていきます。なにより東京文化会館という大きなホールで弾かせてもらえるというのはとてもうれしくて、今からとても楽しみにしています。

■ 8月末に東京文化会館で行われる「第 34 回ソレイユ音楽コンクール入賞記念演奏会」のチラシ

<平松さんの予定演奏曲>

ショパン:バラード 第 4 番 ヘ短調 作品 52

  • 2016 年 8 月 29 日(月) 18:00 開演
  • 東京文化会館 小ホール
  • 全自由席 3,000 円

自分が味わったみたいに、子どもたちに音楽の楽しさを伝えたい

[ 武蔵野音楽大学声楽科1年生 小堀満里奈さん ]

先生が、私のいいところを引き出してくれた

発表会会場にて(5 歳)

2歳で始めたリトミックをきっかけに、14 歳までカワイ音楽教室に在籍していました。4歳からピアノと歌のレッスンを本格的に始めて、ずっと長竹悦子先生に指導していただいてきました。悦子先生は、私にとっては先生というよりも、もっと親しい存在です。優しいけれど、ときには親のように厳しく叱ってくれたこともあって、私のよいところをいろいろ引き出してくださったと感謝しています。

小学校4年生から6年生までの夏休みに参加した、カワイのキャンプはとても印象深い思い出です。キャンプファイヤーをしたり、曲を聞きながらゲームをしたり、音楽三昧の3泊4日は本当に充実していました。初対面の子と部屋が一緒になって、友だちもたくさんできました。おそろいのTシャツに書いてもらった寄せ書きは、今でも大切に手元に残しています。

小学校1年生のときから毎年、歌とピアノでコンクールに参加しました。私は人前に出るのが好きなのに、緊張してしまうところがあって、舞台の上でどうリラックスするかが課題でした。歌詞も覚えて、声も出せるのに、舞台に上がると表情がこわばって呼吸ができなくなってしまうんです。そのときにカワイの先生方が、大きいお部屋で本番に近いような環境を作って、緊張がほぐれるまで何度も何度も練習に付き合ってくれました。

そのかいあって、小学校4年生のときに歌で初めて入賞しました。入賞をきっかけに、ピアノよりも歌のほうに、だんだん気持ちが傾いてきたかな、という気がします。

舞台に立つ経験を味わって、音楽の仕事に就きたいと思うように

文化祭にて(高校 1 年生)

とはいえ進学のときは、ピアノと歌でとても迷いました。結局、声楽科のある高校を選んで、高校1年生の文化祭では、『オペラ座の怪人』のクリスティーヌ役をやらせてもらいました。舞台に立つ経験を味わって、ますます歌うことが好きになっていきました。

この経験が、音楽の仕事に就きたいと思う気持ちを後押ししてくれたように思います。それまではまったく別の仕事に就きたい、という気持ちもあったんです。でも、やっぱりずっと音楽に携わっていきたい。それで音楽大学へ進むことにしました。

今年の4月に大学に入学し、やっと大学にも慣れてきたところです。音楽専門の大学となると、今まで体験したことのない授業もたくさんあります。最初のうちはわからないことも多かったけれど、勉強していくうちに少しずつわかってくると、授業がとても面白くなってきました。

授業の中では、ソルフェージュが好きです。以前からソルフェージュは好きだったのですが、音を取るのは得意でも、最初のうちはリズムが書けなくて苦労しました。そのとき、悦子先生がいろいろ教えて助けてくれたんです。それで理解できて、音符が書けるようになってきたら、とても楽しくて。そのときのうれしさが今でも忘れられません。

悦子先生が、私の憧れの存在です

今年の夏(自宅にて)

将来の夢を聞かれると、以前はまだ幼かったので、歌手になりたいとか、舞台に出たい、と言っていました。でも今は、小さい子に教える仕事に就きたいと思っています。自分自身が味わってきたのと同じように、音楽の楽しさを伝えられたらいいなって。

歌を専門に、ピアノやソルフェージュなども教えて。そう、悦子先生みたいになりたいんです。今、音楽を学んで楽しいと思えることも、教室で習ってきたことを生かして今に至っていると心から思っています。だから、そんなふうに私に音楽の楽しさを教えてくれた悦子先生が、今の私の憧れの存在です。

音楽教室での幸せな時間が、いつも私の背中を押してくれた

[ ピアニスト 井原寿美緒さん ]

コンクールと発表会、年に2回の本番を励みに

5歳から中学3年生まで、カワイの音楽教室に通いました。3つ上の姉が先に個人レッスンを始め、私、妹と、3人姉妹みんなで前田綾子先生にお世話になりました。

先生は本当に優しくて、いつもにこにこしていらっしゃる。ほめられるのがうれしくて、毎週のレッスンに行くのが楽しみでした。課題曲を決める時は、先生が弾いてくださる候補曲の中から一番難しそうに聞こえる曲を選んでいました。姉に追いつきたいという気持ちも強かったし、みんなに「すごい!」って言われたかったんです(笑)。

春は発表会、冬はコンクールと年に2回ある本番が、我が家の最大のイベントでした。当時の私のモチベーションにもなっていましたね。最初に姉がこどもコンクールの関西大会で金賞を受賞して、それからは関西大会で入賞することが目標になったんです。全国大会にはなかなか届きませんでしたが、最後の挑戦と思って受けた中学2年生の時に、初めて出場することができました。

振り返ると、今の私につながる音楽的な経験は、すべて前田先生がくださったと思うんです。歌心をとても大切にされていて、ひとつの曲について本当に細やかにご指導いただきました。レッスン以外にも、休日にコンサートに連れて行ってくださったり、有名な演奏家の公開レッスンを受けさせてくださったこともありました。子ども時代に多くのチャンスをいただいたことが大きな宝になっていますね。音楽教室での楽しい時間が、どんな時も私の背中を押してくれのだと、本当に感謝しています。

  • 発表会で。下段右から2番目が井原さん。
    一番上左端に前田先生。(小学校1年生)

  • コンクール会場で、前田綾子先生、妹と。
    左が井原さん。(小学校4年生)

  • カワイ音楽コンクール・関西大会会場前で。
    右が井原さん。(小学校5年生)

ドイツ留学で、たくましさも身に着いた

姉と競いながら楽しくピアノを続けてきた私が、本気で音楽を志したのは高校生になってから。県立の音楽科に入ると周りのレベルが高くて、負けん気に火がついたんです。その後、京都市立芸術大学、大学院へと進みました。

折々に迷いもありましたが、目標をひとつ突破するごとに道が開けて、演奏家への夢が膨らんでいったように思います。憧れだったドイツ・ドレスデンの大学院に合格できたことも、私にとっては大きな自信になりました。

ドイツで最初に言われたのが、「自分がやりたいように表現しなさい」ということでした。「アジア人はみんな間違いなくきちんと弾くけど、自分を表現しないと印象に残らないよ」って。それまでの私は、自分の思いより、ある基準に達することを第一に考えていましたから、目を開かれる思いでした。ドレスデンは歴史あるとても美しい街なんです。今もピアノを弾くたびに、その街並みや風のにおい、空気感などが自然に背景に浮かんできます。

学ぶことが多い充実した毎日でしたが、最初の3ヵ月はつらかったですね。言葉がまったくできなくて、あちこちで怒られてばかり。ドイツ人って気が短くて、怖いんですよ。人間的にもずいぶん図太くなりました。

この春、大学院を修了し、これからがいよいよ本番

今年1月、姫路の南風会サロンで
行ったソロ・コンサート。

2年間の留学を終え、昨年秋に帰国。大学院に戻り、3月に卒業しました。今年の1月には姫路でソロ・コンサートを開いたんです。前田先生がとても喜んで駆けつけてくださいました。今でもちょくちょく遊びに行っては、先生とお話しするのが楽しみなんです。コンサートの曲が決まるとご報告に伺って、アドバイスをいただいているんです。

演奏家としては、ようやくここからがスタートです。デュオやトリオなど、ほかの楽器とのコラボレーションも楽しいですし、いろいろな活動に挑戦していきたいですね。

■ プロフィール

井原寿美緒/いはら・すみお

兵庫県立西宮高等学校音楽科を経て、京都市立芸術大学音楽学部卒業。同大学院音楽研究科器楽専攻を首席で修了。大学院市長賞を受賞。ドレスデン音楽大学大学院修士課程ピアノ専攻修了。第 12 回大阪国際音楽コンクール、第 13回日本演奏家コンクール、第22回和歌山音楽コンクール第3位。第10回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA⦆全国大会銅賞、アジア大会にて努力賞。他受賞多数。これまでに前田綾子、坂本恵子、坂井千春、イリーナ・メジューエワ、田村響、D.⦆カイザー、室内楽を G.⦆アンガー、チェンバロを中野振一郎の各氏に師事。

とにかく、音楽そのものを追究していくこと

[ 東京藝術大学 音楽学部ピアノ科 准教授 坂井千春さん ]

音楽との出会いを、上手に導いてくださった先生に感謝

通っていた幼稚園にカワイの音楽教室があって、先に兄がオルガンを習い始めていました。だから私が聞いた最初の音楽は、兄のオルガンだったのだと思います。それを聞いて「私もやりたい」と言い出して、4歳のときから私もカワイでピアノを習いはじめました。
当時教えてくださった増田先生はとても熱心で、母いわく、レッスンが30分ぐらいで終わってしまうと、「またあとでいらっしゃいね」とおっしゃって、あとから新たにやってきたところまで見てくださったりしていたそうです。そのおかげもあって、ピアノを弾くのが大好きな子どもでした。

最初の発表会では、ブルグミュラーのバラードを弾いて、ドレスを着させてもらってとても楽しかったのを覚えています。翌年のコンクールに出場したときに、チャイコフスキーか何かの曲を弾いたのですが、本当はソナチネの7番を弾きたかったんです。今思えばきれいな曲を弾かせてもらったのですが、当時の私には音数が少なかったりして、そのよさがまだ理解できなかったのだと思います。決して恨んでいるわけではないですが(笑い)、今でもそれが忘れられないというのもおもしろいものですね。

うちは両親とも音楽家でもないですし、とくに音楽の道に進ませよう、と思っていたわけでもありませんでしたから、「練習をしなさい」と言われたことは一度もありません。そのような中で、増田先生が上手に、音楽が好きだという方向に導いてくださった。音楽との最初の出会いで何かに傷ついてしまうと、嫌になってしまう子もいると思いますが、そこを上手に導いてくださったことに、今でも深く感謝しています。

  • 5歳のとき、初めてのカワイの発表会で

  • 6歳でカワイのコンクールに出場したとき

そこにある音楽を、どうきれいにつくっていくかに尽きると思う

小学校1年生のときに、父の転勤で引っ越したのを機にカワイ音楽教室を辞めて、個人のピアノの先生につくようになりました。小学校、中学校と普通校で過ごしていましたが、高校で東京藝術大学附属に進んで、いつの間にか音楽の道に進んでいた、という感じです。

東京藝術大学の大学院に入ってからロータリー奨学金をいただいて、ブリュッセル王立音楽院に留学しました。その後、今度はパリのエコール・ノルマルへ行き、ヨーロッパには8年ぐらいいました。その間に、アメリカ人の夫と知り合って結婚し、そのあとは10年ぐらいアメリカにいました。向こうの大学で指導をしたり、演奏活動をしたりしていたのですが、京都市立芸術大学からお声をかけていただいて、2004年に日本に戻って来ました。海外での生活が長かったものですから、京都という土地で日本の文化のルーツのようなものを身近に感じられたのは興味深いことでもあり、自分自身にとってもよい経験になりました。京都には8年いて、2012年に東京藝術大学へ移りました。

指導するとき、こういうふうに育ててあげようとか、特別な理念はもっていないんです。というのも、そこにはただ音楽があるだけで、その音楽をどうきれいにつくっていくか、ということに尽きると思うからです。だから、音楽を中心に生徒と先生がいれば、相手が藝大生でも、小さな子どもでも、ご高齢の方でも、やることは変わりないのですよね。あとは、美しい音楽を知ることが一番です。
とにかく、音楽そのものを追求していくこと。それが楽しい子は、音楽を続けていくのでしょうし。それは他の分野であっても同じことで、真摯に追求する姿勢というのがあればいいのだと思っています。

シャミナードなど、女性作曲家たちの曲を紹介したい

今はまだ日々のことに追われていて、なかなか実現できないでいるのですが、いつか女性作曲家の曲を多く紹介できたら、と思っています。シャミナードとかリリ・ブーランジェ、クララ・ヴィークなど、日本でも子どもたちのレパートリーとしても徐々に知られてきていますが、本当に美しい曲がたくさんあります。今は忘れられてしまっているかもしれませんが、当時の彼女たちはものすごく脚光を浴びていたのです。

この間パリに行ったときに、知人のつてでシャミナードが住んでいたという家を見せてもらったんです。今はまったく関係のない方が住んでいらっしゃるのですがシャミナードのことはご存じで、快くご協力くださって。シャミナードは、作曲家として経済的にも自立した初めての女性と言われています。結婚をして家庭を持ちつつも、自分の音楽活動も自由にして、無理なく音楽とともに生きていたと思います。シャミナードのその生き方も含めてとても共感できて、私の一番憧れのタイプなんです。私の留学時代のフランス人の恩師、マダム・アンリオも素晴らしい方でした。フランスの作品は、室内楽も含めてすべて好きです。

また、すでにアメリカでやったことがあるのですが、美術品とのコラボレーションのサロン風コンサートも実現したいなと思っています。絵画などを飾って、絵も見に来てもらい、音楽も楽しんでいただけるような演奏会ができればうれしいです。
夢はたくさんあるのですが、マイペースで一つ一つ実現できたらいいな、と考えているところです。

■ プロフィール

坂井千春/さかい・ちはる

東京藝術大学音楽学部付属音楽高等学校、同大学ピアノ科を経て同大学院修士課程終了。ロータリー奨学金を受けてブリュッセル王立音楽院に留学し、ディプロム・シューペリュールを取得。さらにパリ・エコール・ノルマルでコンサーティスト・ディプロムを最高位で取得。マリアカナルス、ポルト両国際コンクールで優勝。ポルト国際コンクールではドビュッシー賞、現代音楽最優秀演奏賞をあわせて受賞した。ロン・ティボー、エリザベート国際コンクールで入賞後、ロンドン国際コンクールで優勝。故ダイアナ妃よりスタインウェイ・グランド・ピアノを授与される。フィルハーモニア管弦楽団、NHK交響楽団など内外のオーケストラと共演、東芝EMIからCD録音など行った。第2回出光音楽賞受賞。2000年よりニューヨーク州大学音楽学部で教鞭をとった後、2004年に帰国、京都市立芸術大学で教鞭をとる。2006年のリサイタル「フランス音楽の夕」で青山バロックザール賞を受賞。各地でコンサート、セミナーを行う。2012年より、東京芸術大学准教授。谷康子、高良芳江、ニコル・アンリオ、ワショウスキ、エステルハージーの各氏に師事。